講家上
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2はしがき 私たち編著者は,このような問題意識を共有し,現時点における家事事件の処理についての法律・実務の到達点を確認し,それを分析しつつ,実践的で,かつ,運用上や立法論上の課題までを視野にいれた理論書を残しておくことが有用であるとともに,特定の分野の解釈や課題が何かを知る必要性が生じたときに,参照することで当該テーマについての問題点をひととおり理解することのできる実践的な論考が必要であると考え,本書の企画に携わることになった。 本書は,このような甚だ欲張りな企画を具体化するため,テーマ設定と執筆者に関し,次のような工夫を試みることとなり,それが本書の特長ともなっている。① 家事事件手続法の基本的な構造や家事事件の手続の流れに関するテーマと事件類型からアプローチするテーマを配して,双方の視点から家事事件手続法についての理解が可能となるようにした。また,各テーマは,あまり細分化せずに,ある程度まとまりのあるものとして,各執筆者が広い視点から考察することを可能とした。それぞれのテーマは,理論面や運用面の検討のほか,今後の課題や立法論にも及んでいる。② 本書が取り扱う分野は手続法と家族実体法の交錯する分野でもあり,理論的検討,裁判実務の運用にあたっては,実体法の知識・理解が不可欠となることが多い。そこで,全体を通じて,基本的には,手続法,家族実体法の境界にこだわることなく,各執筆者の判断で論及していただいているが,家族実体法に比重をおいたテーマも取り上げている。このようなものとしては,「遺産分割(主として実体法的側面)」などがある。③ 手続法的な側面については,個別の条文の解釈を超えた,家事事件の手続の底流をなす基本的な理念にさかのぼった解説が可能となるようなテーマ設定をした。この点は,特に「家事審判における手続保障」,「当事者の役割と裁判所の役割」,「家事事件手続法における資料収集」,「家事事件手続法下の調停と審判の関係」といったテーマ設定に顕著に現れている。④ いろいろな角度からの検討が有意義と考えられる主要なテーマについては,複数の執筆者がそれぞれの関心を有する観点から解説することとし,その場合の執筆者は,異なる視点からの検討となることを期待して,

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