講家上
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17第3 訴訟・非訟2分論──立法者のフリーハンドの容認と評価 29)竹下守夫「家事審判法改正の課題」家月61巻1号52頁以下参照。30)筆者は,法制審議会部会の席上で若干の問題提起を試みたが,その点については余り問題とはされなかった。ただ,当該事件における手続保障については,別表第2と同等のものが保障される形になり(法188条3項,4項など参照),各論的には異質な取扱いがされていることは,訴訟・非訟2分論の立法過程における限界を示すものとも言え,興味深い。31)このことは,訴訟から非訟への一方的な流れの存在を示しているようにもみえる。この点は,まさに三ケ月博士がこのような流れを「歴史の必然」とした点(第2の2⑴参照)を裏書きするものともいえようか。32)法制審議会民法(相続関係)部会資料4第2の1の乙案参照。ただし,中間試案の段階ではこのような方向は放棄され(民法(相続関係)等の改正に関する中間試案(平成28年6月21日)第4の1参照),裁判所の裁量は形式的形成訴訟的な構成で訴訟手続の中に吸収されている。その背景には,非訟化による遺留分権利者の既得権の弱体化への懸念があったものとみられる。したら,それでも憲法29条1項に違反しないかは,著しく疑わしいように思う。そう考えると,相続人廃除事件は,従来の最高裁大法廷の定立した基準から言えば,『純然たる訴訟事件』と見るべきように思われる」と論じておられた。29)筆者自身も,竹下教授の見方に基本的に賛成で,前述のような判例によるこの点の正統化は極めて疑わしいと感じていた。しかし,今回の改正でも,この点は正面から取り上げられることはなかった。30)この例は,一度非訟化され,最高裁判所等でそれが正統化されれば,再び訴訟事件に戻すことは実際の立法プロセスでは極めて困難であることを示唆している。その意味で,立法者の正統化の説明は比較的容易であり,その行動範囲は広く,逆に言えば,非訟化の際には慎重な考慮が必要であることを示唆しているともいえようか。31) 最後に,遺留分減殺請求事件の非訟化の可能性という問題である。この点は,法制審議会において現在,審議中の論点の一つである。32)現状の遺留分減殺事件は,訴訟事件として,遺産分割とは手続上切り離され,寄与分の考慮ができないなど実質的に衡平な相続問題の解決に障害となっている面があるとされる。仮にこれを非訟事件とすることができれば,遺産分割と同時の解決も可能となり,衡平な判断も認められやすくなる。そこで,遺留分減殺請求権という実体上の権利を前提とする現在の法律構成では訴訟事件とならざるを得ないところ,実体上の遺留分権を一応の前提としながら,それに基づき裁判所が諸般の事情を考慮して遺留分を形成的に付与する裁判をするという立て付けをとれば,非訟事件としても構成可能になる。その意味で,ここ

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