講家上
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第1章 訴訟と非訟38)この制度については,山本和彦「犯罪被害者の保護」伊藤眞=山本和彦編『民事訴訟法の争点』37頁及びそこに掲記の文献参照。39)この制度については,山本和彦『解説消費者裁判手続特例法』(弘文堂,2015年)173頁以下など参照。40)立法論としては,更なる拡大の可能性が論じられている。例えば,弁護士会などから提案されている民事審判などの構想である。このような問題については,山本・前掲注35)100頁など参照。41)このような観点から倒産法上のハイブリッド型手続(特に否認請求制度等)の立法論的問題を指摘するものとして,山本和彦「倒産事件における各種訴訟の立法論的課題」島岡大雄ほか編『倒産と訴訟』(商事法務,2013年)477頁注3参照。22以下),38)消費者裁判手続における簡易確定手続(消費者裁判手続12条以下)39)などであり,これらは訴訟事件としての決定手続+判決手続という構成ではあるが,憲法32条及び82条の問題が生じることは非訟手続の場合と同じであり,いずれも純然たる訴訟事件について,訴訟手続への移行可能性を担保することで,第1次的な決定手続による対応を可能としているもので,ハイブリッド型の活用例と言える。その結果,実質として,秘密保護・簡易迅速という非訟手続のメリットの享受が目論まれているといえよう。40)3 ハイブリッド型手続の限界 以上のように,ハイブリッド型の手続は,判例法理の枠内で実質的に非訟化の要請を満たすものとして,極めて実効的な手法である。しかし,それでは,このようなハイブリッド型の構成に限界はないのかというと,必ずしもそうではない。まず,何よりも,この制度が判例法理の前提の下で成立するためには,訴訟手続への任意の移行の可能性が前提となる。そのような移行を法律上制限することは,無論憲法違反となるが,それだけではなく,訴訟移行に事実上の制限がないのかも憲法上やはり問題となろう。つまり,利用者が任意に訴訟手続への移行を選択できる基盤の構築が制度として重要になると解される。この点で,例えば,倒産法上のハイブリッド型手続について,訴訟手続で判断する裁判所が前置決定手続と同じであれば,仮に訴訟移行を認めても,前置された判断が覆る可能性は実際上低いことになる。そうなれば,当事者は移行自体を諦め,実質上裁判を受ける権利が侵害されるおそれも否定できないことになる。41)ハイブリッド型の手続を制度構成する際には,そのような点にも十分な配慮をする必要があろう。

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