25第5 非訟化のニーズと受け皿となるべき非訟手続49)なお,憲法改正による場合も,立法者に対する白紙委任にはなお懸念が残るとすれば,現在の憲法82条2項但書を緩めていくアプローチが相当ということになろうか。50)限界は全くないのかなどその問題点については,第4参照。51)このような訴訟手続の特則の可能性については,山本・前掲注35)100頁,山本和彦「手続保障再考」井上治典先生追悼『民事紛争と手続理論の現在』(法律文化社,2008年)159頁以下(同・前掲注35)『民事訴訟法の現代的課題』120頁以下所収)など参照。そうはいかない。その意味で,この問題の(解決がもし真に必要であるとするならば)抜本的な解決策は憲法改正によるほかないことになる。49) 他方,迅速性の要請のある事件については,そのニーズを満たす手続としては,いくつかの方向性がある。一つは,やはり非訟化(決定手続化)の方向である。必要的口頭弁論を外すことによって書面手続等インフォーマルな手続を可能にすることは,手続の迅速化の最も端的な方途であり,憲法上の要請をクリアできるのであれば,非訟化が考えられる。その場合の具体的手続としては,迅速性の要請と手続保障の要請とを具体的事件類型に適合した形で調和させることが模索され,手続係属の通知規定,審尋(意見聴取)手続の規定,攻撃防御機会を付与する規定等を伴う非訟手続が迅速性の要請の強さに応じて考えられることになろう(このような受け皿手続のあり方については,2参照)。他方,端的な非訟化と並ぶ選択肢としては,ハイブリッド型手続の方向がある。これは,非訟化に対する憲法上の要請のクリアが困難な事件類型では,簡易迅速な非訟手続を前置し,当事者に不服がある場合には異議等による訴訟手続への移行を認めることとし,多くの事件が非訟手続の中で解決できれば,結果として迅速性を確保できることで満足するものである。異議等が頻発すれば,かえって手続が長くなるおそれはあるものの,労働審判のように,それが成功すれば,実質的な非訟化のメリットは享受できる。50)さらには,訴訟手続の中で,迅速訴訟手続を設ける方向も考えられる。やはり憲法上の要請のクリアが困難な場合には,訴訟手続の中で迅速化を図らざるを得ないからである。これについては,事件の対象について憲法上の限界はなくなるが,必要的口頭弁論等の縛りの中で,ファースト・トラック手続等の可能性を模索することになろう。51)2 受け皿となる非訟手続のあり方─争訟的非訟事件 以上のように,非訟化のニーズに基づく多様な選択肢を考えるとすれば,
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