第1章 訴訟と非訟52)なお,この点は訴訟手続についても全く同様である。訴訟におけるハイブリッド化や訴訟手続のダブルトラック化など訴訟手続の多様化も現下の民事訴訟制度の課題と思われる。53)前述のように,これは外国で行われれば,「外国判決」として評価されるようなものである(第2の3⑴参照)。54)実質的手続保障の概念については,山本・前掲注51)150頁以下参照。このような手続イメージについては,仮処分の本案代替化の議論などとも関係するが,これについては,山本和彦「仮の地位を定める仮処分の特別訴訟化について」判タ1172号22頁以下参照。55)このような手続保障のうち,どのようなものが憲法32条(審尋請求権)の保護対象になるかは,十分な検討を要する。現時点では,相手方がない事件も含め,主張立証ができる機会が付与されることは当然に保護対象に含まれると解するが,相手方のある事件については,さらに(相手方として)事件の係属を知らされる権利や相手方の主張を知ってそれに対して対応できる権利などは,憲法上も保護に値すると解するが,この点は今後さらに考えてみたい。26受け皿となる非訟手続としても多様な手続が必要となる。52)すなわち,訴訟事件に近接した非訟事件から,訴訟事件とは全く異なる非訟事件まで,多様な事件類型が存在するとすれば,求められる非訟手続についても,訴訟に近接する非訟手続から,それとは全く異なる(行政手続に接する)非訟手続まで,多様な受け皿手続が想定されるべきことになる。そこで,以下では,争訟的非訟事件に係る非訟手続に求められる要素と非争訟的非訟事件に係るそれとを対比しながら,非訟手続のあり方について,若干の考察を加えてみる。 まず,争訟的非訟事件に係る非訟手続に求められる要素としては,53)訴訟手続と基本的に同等の手続が要求されることになる(非公開性のみが異なるものとなる)。しかし,現実にはそのような手続は考え難く,むしろ実質的な意味での手続保障を確保しながら,54)形式的手続保障を訴訟手続からマイナスしていくようなイメージの手続になることが予想される。その場合の訴訟手続との相違点としては,公開(憲法82条の問題)のほか,期日(口頭弁論ではなくても対審=審問への当事者立会権を認めるかどうか),主張(相手方の主張を知って対応できる権利を付与すべきか),立証(自由な証明を許容するものとしても証拠申立権などを保障すべきか),不服申立て(控訴・上告と抗告の手続の相違をどう考えるか)など,訴訟手続と相違する実質的な理由を細かくチェックしていく必要があろう。55) その意味で,この問題を考えるについては,家事事件手続法の別表第2事件手続が一つの「標準型」モデルとなり得ると思われる。そこで与えられる手続保障(法67条~72条)は,争訟性を有する非訟手続の一種のデフォルト
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