講家上
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27第5 非訟化のニーズと受け皿となるべき非訟手続56)別表第2事件+の手続として,例えば,借地非訟事件手続などが考えられる。57)別表第2事件−の手続として,例えば,会社非訟事件手続などが考えられる。58)高田・前掲注3)14頁は,「非訟手続規制のベイスライン(準拠軸)を想定しつつ,そこから離脱することに合理的理由があるかどうかを,個別事件類型ごとに検討するというアプローチ」を提言されるが,全面的に賛同する。59)過料に関する判例の非訟化の正統化の議論(第2の1⑴)を参照。また,兼子説の理解(第2の1⑴参照)もこの点において興味深い。ルールになると考えられるからである。ただ,それにプラスをすることも考えられるし,56)別表第2事件−という手続のイメージもあり得よう。57)いずれにしても,標準モデルから乖離する場合には,その実質的根拠の検討・説明が必要となり,58)それが標準モデルの大きな機能となり得よう。3 非訟手続の「下限」─憲法上の要請と行政事件との均衡 他方,非訟手続に要求される「下限」,すなわち争訟性のない非訟事件についての手続であっても,必ず求められる手続保障のレベルである。従来は,必ずしもこのような意味での下限は観念されないと理解されていたようにも思われるが,それは相当ではない。 まず,憲法上の「下限」が観念できる。前述のように,憲法32条の「裁判を受ける権利」の要請は,純然たる訴訟事件にも性質上の非訟事件にも妥当するものとして再定義される必要があり,その内容についても,単に裁判所に申立てができる(裁判所の判断を受ける機会)だけではなく,争点について主張立証の機会が付与されること,中野説の言われる審尋請求権も憲法上の要請と理解すべきである。具体的には,主張立証の機会が与えられることは,憲法上も要求され,最低限の攻撃防御の機会の付与は,非争訟的な非訟事件においても,裁判を受ける権利として憲法32条により保障されているものと解される。したがって,そのような「下限」を実現しない手続は憲法違反となる。 また,行政事件と比較した「下限」も観念されるべきである。争訟性のない非訟事件は,実質的には行政事件であるとの理解を前提にすれば,59)行政事件における手続保障の水準は,非訟事件についても適用にならなければおかしい。そして,これが行政処分として一種の不利益処分となるのであれば,行政手続法の手続保障のレベル感が重要な意味をもつことになる。この点で,

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