29第6 おわりに──新たな理論的地平を求めて62)その意味で,平成20年決定における申立書送付に係る那須反対意見(第2の3⑵参照)の視点は重要なインプリケーションを有する。63)この点で,前述のように,家事事件手続法の別表第2事件の手続は今後,そのような「標準手続」として機能する可能性があろう。ただ,その「標準手続」のどの範囲までが憲法上の保障の対象になるかは,なお検討を要する。比較衡量を組み込んだ新たな憲法ルールの定立の必要性があろう。62) 具体的な対応として,ハイブリッド型手続は,純然たる訴訟事件についても非訟手続の要素を取り込む試みであり,貴重なテクニックとして汎用性があるものである。ただ,なおその対象事件や前置手続のあり方について限界がないのかなど理論的探求の必要は否定し難い。また,非訟化後の受け皿としての手続のあり方について,争訟的な非訟事件に関する「標準手続」を観念し,63)標準手続からの乖離の際に立法者の説明責任を求めること,また非争訟的非訟手続についても,最低限の手続保障として,憲法32条の審尋請求権や行政手続との比較の視点の重要性を説いてみた。 本稿において訴訟と非訟に関する従来の議論に付け加えられた点は,さほど多くはないが,筆者が新法立案等に加わる際等に感じた疑問点その他今まで折に触れて考えてきたことを形にしてみた。極めて不十分なものであることは自覚しているが,ある時期から新たな議論の展開が止まっているようにすら見える「訴訟と非訟」の問題について,家事事件手続法の立法等を契機として新たな視点からの議論が再開・展開されることを期待し,今後の検討の何がしかの参考になれば幸甚である。
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