11_心問題
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4  第1章 はじめにとになります。これは大きなストレスとなって心身に重くのしかかり,ときに何らかの精神的な問題を生じることも不思議ではありません。このように,心の問題が直接又は間接に家族のトラブルと関連していることは多いものです。最近よく耳にする「パーソナリティ障害」は,正式な診断がついていることは滅多にありません。しかし当事者の話を聞いていると,何らかのパーソナリティ障害,又は障害に達する範囲ではなくてもパーソナリティの偏りもしくはその傾向が背景にあるのではないかと思われることはよくあります。例えば,妻が大量の飲酒,薬の過剰服用,危険運転,2階からの飛び降り,リストカット,不貞,浪費などを繰り返す。夫が職場の人と必ず対立して職を転々とする,通りすがりの人とも喧嘩をして警察沙汰になる,妻子にも暴力を振るう。こうした話を聞くと,その妻は境界性パーソナリティではないか,その夫は反社会性パーソナリティではないか,といったことが素人なりに頭に浮かびます。心の問題が紛争の背景にある(と思われる)場合でも,離婚原因があるかないか,親権はどちらに帰属するかといったことを,心の問題を特に考慮に入れず,一般的な法律の枠組に当てはめて淡々と判断し処理することもできます。しかし,家庭問題は人の最もプライベートな部分に関わる繊細な問題であり,その解決方法によって当事者のその後の人生を左右する重大な問題でもあります。そして,心の特性又は状態によっては,一般論で正しいとされる解決が合わないこともあるかもしれません。解決の内容だけでなくプロセスも重要です。当事者の個性に合わせたプロセスを選択できるかどうかで,比2 心の問題が紛争の背景にある場合の心構え心の問題が紛争の背景にある(と思われる)ケースには,その問題に精神科等の診療を経て明確な診断名がつけられている場合と,そうでない場合があります。

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