11_心問題
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そのようなわけで,心の特性や状態を考慮に入れて解決方法を模索したいものですが,他方において素人が勝手に診断名をつけ,その思い込みに基づき偏った方向に暴走してしまうのも危険なことです。可能であれば専門医に相談し,なるべく客観的な情報をその医師に提供した上でアドバイスを得ましょう。第1章 はじめに  5較的早期に円満な解決を迎えられるか,逆に紛争が拡大して泥沼化してしまうかが左右されることもあります。ですから,心の特性や状態を考慮に入れて進め方を選択したり,取り決める内容を検討したりする方が,より良い解決を導くことができる可能性があります。例えば,この当事者の場合は協議による解決が適しているのか,それとも裁判手続を利用することが適しているのか,という選択には,当事者の個性を考慮に入れる必要があるでしょう。さらに,この事案ではどのような面会交流の定め方が適切かという判断にも,両親と子ども,それぞれの個性が深くかかわってきます。(1) 正しく理解し慎重に判断する�������������「骨折している」「発熱している」といった客観的に診断できる症状とは異なり,心の問題は目に見えず,複数の診断名を兼ね備えていることもあり,短期間では症状の一部しか表れないこともあるため,医師でも判断が難しいものです。ですから特定の疾患であると決めつけたり,その疾患であると他の関係者(例えば裁判官,調停委員など)にも同意してもらうことにこだわったりせず,あくまでも可能性の一つとして念頭に置くことが安全でしょう。一方,医師の診察を経て診断名が確立している場合には,関係する援助者(例えば,弁護士など)としても,その症状について信頼できる文献等を調査3 具体的な留意点心の特性や状態を念頭に置いて解決に当たるといっても,具体的にはどのような点に気をつけるとよいのでしょうか。一概には言えませんが,ある程度共通すると思われる留意点を以下に挙げてみます。

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