6 第1章 はじめにし,それなりに知識を深めた上で解決に当たることが必要です。当事者を援助している福祉機関・医療機関・教育機関などがある場合,それらの機関との連携を取ることも有益です。当事者からの話だけを聞くよりも,複数の柔軟な視点から,より良い選択肢が見えてくるかもしれません。例えば,「子どもが自閉性障害だから環境の変化は禁物であり,離婚は決して応じられない。万が一離婚になるとしても住み慣れた自宅から出て行くことはできない」と妻が主張しているものの,判決では離婚が認められてしまう可能性が高く,かつ自宅を夫から妻に財産分与として譲渡することも実現困難というとき,単に離婚拒否や自宅獲得に固執するよりも,もしかすると,転居を前提として,その準備を早めに整えることやその中でできるだけ子どもの安心できる環境を維持することに視点を切り替え,離婚自体の紛争を激化させないほうが子どもにとって有益であると担当医は考えるかもしれません。事情が許せば,適切と思われる場合に関係諸機関と連携を取ることも検討しましょう。問題について偏見を持つこととは明確に区別されます。精神疾患というとどうしても,一般とは違う思考や行動をする人というイメージがあり,消極的感情を抱いたり,きちんと向き合うことを避けたりしがちです。しかしその問題を抱える本人も,社会に馴染めず生きづらさを感じていることや,悪気があるわけではないのに人から怒られたり嫌がられたりしてばかりで傷ついていることもあります。それゆえにこそ,偏見や差別には敏感になっています。また,先にも述べたように,最も親密で信頼できるはずだった家族とのトラブルを抱えることは大きなストレスとなります。当事者は,援助者に相談に来る前から,深く悩み傷ついています。その状況で,感情的になりやすい,話がまとまらない,バランスの取れた決断ができないといった精神状態になることは誰しもありうることです。そうした当事者の状態に対し,援助者が(2) 偏見をもたない�������������������心の問題を理解し,法律問題の解決に当たって考慮に入れることと,その
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