11_心問題
27/48

ですから,心の問題を持つ人を個人として尊重することを根幹に,その方の物事の考え方,認知の仕方などの特性を正しく理解し,それを受け止めて事に当たるようにしましょう。客観的な視点を保つよう一線を画することも必要です。疾患の種類によっては,認知にゆがみが生じており,客観的には事実でないことを真実であると信じ込んでいることもあります。その話を援助者まで信じ込んで解決に当たってしまうと,方向を誤りかねません。また,精神的な問題ゆえに,感情の起伏の激しさ(又は平坦さ)が一般的な感情表現とは異なることもあります。それに援助者が振り回されてしまうと,これもまた客観的に指し示すべき方向性を見失うことになります。上に述べたような点は,心の問題を抱えた人が依頼者である場合と紛争の相手方である場合,さらに援助者が心の問題を抱えた当事者たちの仲介役として間に入る場合のいずれの場面にも当てはまります。パーソナリティ障害の依頼者を援助する場合は,共依存にならないという注意点もあります。ときにパーソナリティ障害を抱える方は独特の魅力があり,同情を引き付けることがあります。援助者の職種にある方は人助けが専門なのですから,つい手助けしてあげたくなり,気がつくと依頼者のペースに呑み込まれている,ということもありえます。依頼者の期待に過剰に応えようとし,援助者まで一線を越えた行動に出てしまい,後に自分の身に災難を招くこともありますので,入れ込み過ぎは禁物です。また,依頼者をなだめようと「今回だけは特別に」という態度を取ることは,かえって依頼者を混乱させますので,できないことは最初からできないと言うべきです。紛争の相手方にパーソナリティ障害が疑われる場合,相手方からどこまでやりおおせるか試されることや,挑発的な行動や,嫌なところをうまく突い第1章 はじめに  7腹を立てたり敬遠したりしてしまうなら,当事者との信頼関係は築けませんし,解決も遠のいてしまします。(3) 一線を画する��������������������援助者として,当事者の心情に共感を示すことも大切ですが,その一方で

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る