11_心問題
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3暴力の始まりしかしながら,結婚後半年程度経ち,妻が長男を妊娠した頃から夫の暴力設例1 男性からのDVと監護権・離婚・面会交流  123が始まった。最初は,夫が帰宅した際に夕食の準備が終わっていなかったという理由で不機嫌になり,妻が悪阻のためゆっくりとしか動けないと説明したところ,「甘えてるんじゃねぇよ!」と突然に妻に殴り掛かり,「俺が家族のためにくたくたになるまで働いているのに,お前のその態度は何だ! そんな簡単なこともできず,挙句の果ては言い訳か! まずは謝れ!」と叫びながら,しゃがみ込む妻を殴る蹴るした。妻はお腹の赤ちゃんをかばいながら,「ごめんなさい」と必死に謝り続け,数分後に解放された。夫は翌朝には茫然とした様子で「昨日はどうかしていた。疲れ切ってついお前に当たってしまった。子どもが生まれるというのに,こんな夫で申し訳ない。許してくれ」と謝り,妻も「私こそ,あなたが頑張ってくれているのに行き届かずごめんなさい」と謝った。それからは,夫が仕事帰りにケーキや花束を買ってきてくれたり,夫婦で一緒に子ども用品を買いに行ったりする円満な日がしばらく続いた。そして長男が誕生した。4暴力の悪化しかし,徐々に夫の態度は再び悪化し,ささいなきっかけで暴力を振るうことが日常化した。家が片付いていない,料理の味付けが気に入らない,妻の返事が気にくわないという出来事すべてが暴力につながった。その態様は,殴る・蹴る,押し倒す,髪をつかんで引きずりまわす,物を投げるなどである。一度暴力を振るい始めると人が変わったようになり,2〜3時間にわたり暴力が続くことも多くなった。暴力を振るった後は大人しくなり,泣いて詫びたり妻にプレゼントをしたりという繰り返しであった。妻は,夫がいつまた突然にキレて暴力を振るうかとびくびくしながら生活するようになった。夫は妻が実家との交流を持つことを嫌い,長男が生まれた後も里帰りをさ

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