1DV加害者のパーソナリティ傾向,トラウマなどDV加害者には様々なタイプの方がいます。①社会的地位が高く,家庭内に上下関係を持ち込むタイプ,②家庭外では物柔らかで腰の低い人として知られているのに家庭内では豹変するタイプ,③常日頃から家族に限らず第三者と頻繁に衝突を起こしているタイプなどです。128 第5章 設 例①に挙げたタイプは,自分の能力に自信があり,競争社会で勝ち抜いてきたという自負があり,他の人を自分より下であるとみなす傾向があります。その視点からは,妻子は自分より劣った存在,自分に養われて依存している存在であり,自分の所有物,支配対象となります。妻子に暴力を振るっても何も悪くない,むしろ教育・指導して家族の改善・向上を図っているという認識であることもあります。この背後には,自己愛性パーソナリティが潜んでいることもあります。妊娠・出産により妻の注意が夫から子に移ったときに自己愛が傷つき,暴力が初発する例も多いようです。自己愛性パーソナリティによる加害については設例2のモラルハラスメントで詳しく扱います。②のタイプは,気が弱くて言いたいことが言えない,完全主義で外面的には非の打ちどころのない自分でいたいなど,社会生活でストレスを溜め込んでおり,気を許せる相手にだけ暴力という形でストレスを発散しているのかもしれません。③のタイプは反社会性パーソナリティが関係している可能性があります。また,どのタイプでも,加害者自身も暴力的な又は過度に厳しい養育者の下で育ったためにトラウマ等を抱えていることもあります。また,特性として,気持ちを言葉で伝えるのが苦手であることや,怒りをコントロールできないこと,相手の気持ちを想像できないことなどが見受けられることがあります。また,男尊女卑的な価値観を持っている傾向もあります。いずれにしても,加害者が暴力を自覚することや暴力的な傾向を改めることは極めて難しいといわれています。裁判手続においては暴力の事実自体を心の問題と本事案の分析
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