5_国ビ
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12第1部 総論編ように、インコタームズや信用状統一規則は、非国家法的な規範である。 一方、標準契約約款のように、個別の契約の内容として当事者の合意によって採用されるものもある。これらによって強行法規を排除することはできず、契約の準拠法の許容する範囲で実質的な法規範として機能するものだ。 これらの民間団体や企業によって形成されるソフトローは、国際ビジネスをスムーズに展開するためのルールの一翼を担っているものとして重要である。国際的取り組みの限界と課題 これまでの国家間あるいは民間の外交会議では、欧米先進国の前提とする法体系の影響が強く、イスラム諸国や発展途上国からの積極的な参加が弱いという指摘もある。このため、多くの加盟国を得ていない条約も多い。また、これまでに存在している条約等の国際的規範の多くは、極めて限定された分野を規律するにとどまり、広範な分野を規律対象とはしていない。さらに、多国間条約がまとめられても、署名国数が発効要件に満たないとか、主要な国々が条約を批准しないと、事実上、空文化してしまう。いくらニーズがあっても統一的な国際的ルールの構築は難しい状況にある。二国間や複数国間の条約・協定 こうした状況で、一部の国だけで条約や協定等を目指す動きが活発化している。投資については世界的な包括的ルールが十分に整備されていないが、二国間や複数国間の投資協定が数多く締結されている。二国間投資協定(Bilateral Investment Treaty=BIT)等があると、海外への進出・投資が進めやすくなる。BITは1990年代から急増し、投資協定を積極的に活用して海外投資を考えていく必要性が高まっている(120頁参照)。 自由貿易協定(Free Trade Agreement=FTA)や経済連携協定(Economic Partnership Agreement=EPA)も実質的にはBITと同じ内容を含むことが多い。例えば、米国、カナダ、メキシコが締結している北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement=NAFTA)は、部品や原材料を三国の原産とすることを促す原産地規則を設け、製品の部品中、所定の割合以上を3カ国内から調達すると関税がゼロになる等の仕組みを設けて地域統合を図った。ただ、NAFTAを改編した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が2020年7月1日に発効し、特に自動車分野で域内無関税輸入の条件である原産地規則が大幅に改定され、高い域内付加価値割合や特定部材の域内産品使用義務等が求められる等、米国の保護主義的な動きが垣間見え、今後の動向は要注意である。

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