287結びに代えて 〜健全な国際ビジネスの発展のために~健全な国際ビジネスの発展のために 日本では、限られた一部の分野を除いて、必ずしも広く「商人自治」の考え方が発達してこなかった。紛争処理についてもお上を頼りにする傾向が強く、ルールを自分たちで作り、守っていくといった発想が弱かった。 そのことは、全般的に日本における法律家の数が限られていることと、法的な問題の捉え方が必ずしも先鋭ではなく、むしろあえて法的な解決を避けようとしてきたことと無関係ではないだろう。それが、例えば、日本における商事仲裁の未発達・未成熟をもたらしたとも考えられる。欧米では、これとは逆に、商人自治の発想と法的な考え方をベースとして、ルールを自分たちで作り、発達させようとしてきたことが国際商事仲裁の発展にも寄与したと考えられる。 自分たちで合理的なルールを構築し、海外の企業とも協調して発展していくためには、外国資本をも積極的に受け入れていくことも必要だろう。その場合の視点として、一般消費者、ユーザー等の市民の利益を最大化する要請とともに、ビジネスに関与する人々のインセンティブをいかに確保し、かつ日本における既存の事業活動の良いところをどのように確保し、発展させていくかが重要だ。これに加えて国際ビジネスの舞台では、外交上の配慮と日本の国益が衝突することもある。その場合、日本の市場の空洞化を防ぎ、外資による不当な占領を上手に回避できるような日本の法整備や法の運用も重要だ。 また、国際情勢の流動化や少子高齢化等に伴い、内外の経済環境が厳しさを増す中で、民間レベルでの経済交流が国際的な平和を維持するために重要な意義を有している。かつての植民地時代のように現地の人々を搾取するとか、不公正な取引によって短期的な利益追求や環境破壊等に終わってしまうようなビジネスは、決して好ましいものとはいえない。あざとい貪欲な資本主義では困る。誰か他人に任せきりで資本主義が自然に健全に運営されるようになるわけでもない。自分たちの欲望の追求だけに終始すれば、長くは続かない。健全な発展を可能とするためには、知恵を絞る必要があり、公正な法と規律の構築と運用が求められる。中長期的な事業価値の向上を目指して国際ビジネスを展開結びに代えて
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