iはじめに ヒト、モノ、カネの膨大な行き来が可能となって世界市場の一体化が進んで久しい。IT革命と通信・物流技術の発展に伴って、海外の垣根は一層低くなった。国際ビジネスは極めて身近なものになっており、その重要性は極めて高い。しかし、グローバル経済の進展は様々な問題を惹起している。国際的なビジネスには様々な法的リスクがある。むやみに海外に進出しても、そこで痛い目に遭って高い授業料を払わされるのでは、せっかくのビジネスも台無しである。 積極的かつ前向きにビジネスを展開していくためには、国際ビジネス法の知識を欠かすことはできない。日本企業が売上を伸ばすために確固とした海外戦略を展開するには、法的な分析力も必要だ。日常的にも、法的・契約的視点をもってビジネスに取り組むことがますます重要になっている。例えば、日本の企業が海外の事業を買収していくといった局面でも、あるいは、それとは逆に外資を相手として日本国内で事業が行われる局面でも、それぞれ十分な法的チェックなくしてビジネスの成功はおぼつかない。 本書は、グローバルに展開されているビジネスにおける法の基本的なしくみを踏まえ、私たちに求められるリーガル・マインドと基本的な知識を整理して理解することができるように、図解等も利用しながら幅広く解説しようとするものである。国際取引法ではなく、「国際ビジネス法」としたのは、国際的な取引に関する法だけではなく、M&A等の組織再編や多国籍企業の内部統制やコンプライアンス等の組織法の諸課題も含んでいるからである。 国際ビジネス法の分野では、新たなルール形成の動きも活発である。日本でも国際ビジネスに影響を及ぼす重要な法改正等が目白押しである。これらの動向に加えて、ソフトローや新しい議論の展開をも踏まえていはじめに
元のページ ../index.html#5