難しい依頼者と出会った法律家へ
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(2) 両極端な考え・気持ち 境界性パーソナリティ障害のもう1つの特徴は,他者への見方が,良いから悪いへと極端に変化し,自分についての自己評価も,ポジティブとネガティブの間を両極端に揺れ動くということです。 他者と知り合ったばかりの時は,「こんなに素晴らしい人はいない」と極端に理想化するのですが,何か失望するようなことがあると,突然に見方が変わり,「なんて最低な人なのだ」と極端に価値下げをするのです。 また自分自身についても,自分を「善良で他者から好かれ,能力がある」など,ポジティブに感じているときと,「自分には何の取柄もなく,他者から疎んじられている」とネガティブに感じているときと,両極を揺れ動くのです。 現実的に考えれば,ほとんどの人間は極端に善でも,極端に悪でもありません。現実的なものの見方ができる人にとっては,どんな相手にも良い面と悪い面があり,時と場合によって相手に対して様々な感情を抱くと理など,親しい関係になるほど,見捨てられる不安は一層強くなり,見捨てられまいとしがみつくような行動に出ます。たとえば,相手に見捨てられないように必死で機嫌をとろうとしたり,会っていない時間が不安で仕方がなく,頻繁にメールや電話をしてつながりを確認しようとしたりします。 そして,他者に少しでも冷たい態度,無関心な態度をとられたと感じると,見捨てられるのではないかという不安が搔き立てられ,見捨てられることへの怒りの感情や絶望感が沸き上がります。 さらに,その激しい感情に突き動かされて,衝動的に様々な行動に出るのです。 友人や恋人と離れているときに寂しさを感じるのは自然なことですが,多くの人は「3日後には会える」とか,「用事があれば電話をすればよい」など,離れていても相手の存在を感じ,つながりを信じて,寂しさに耐えることができます。しかし境界性パーソナリティ障害の人は,相手と離れた途端に,相手の存在感がとても希薄に感じられ,自分から遠く離れていってしまう感覚を抱き,見捨てられると感じてしまうのです。43第1章 情緒不安定な当事者(境界性パーソナリティ障害)

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