難しい依頼者と出会った法律家へ
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 境界性パーソナリティ障害の人は,気分が高揚しているときには化粧や服装にも気を使って着飾っているのに,気分が落ち込んでいるときには化粧もせずにだらしない服装をしているなど,気分によって印象がガラリと変わります。また,対人関係における態度も,両極端に変化することはこれまで述べたとおりです。 洋介さんの語るM美さんの激しい行動(ストーカー行為,性的乱脈)も,それまでのM美さんの清楚な印象とのギャップが大きいものです。また,M美さんの母親に対する怒りも,思いがけないものでした。 佐藤弁護士は,M美さんの性格や行動パターンについて,ここまででかなりの情報を得ました。次に考えるべきことは,「M美さんは,弁護士である私に対しても,同じような行動をとるかもしれない」ということです。少なくとも,この時点から,M美さんが弁護士との関係では衝動的な行動に出ないように配慮していく必要があります。 そのために,具体的にどうすればよいか,事例の続きに沿って見ていきましょう。51第1章 情緒不安定な当事者(境界性パーソナリティ障害)弁護士の困りどころ 佐藤弁護士は洋介さんの話からM美さんの性格の別の面を見ることになりました。また,二度目の打合せで会ったM美さんは,初対面のときとは服装も表情も別人のようでした。 そしてM美さんの行動は,初対面のときの抑制のきいた大人びた態度から,母親を怒鳴りつける攻撃的な態度に変化し,佐藤弁護士は思いがけない展開に驚愕してしまいました。 佐藤弁護士は,M美さんの行動を予測できず,後手後手に回っているようです。望ましい対応

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