難しい依頼者と出会った法律家へ
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頼者」は弁護士にとって「困った依頼者」ですが,実は最も困っているのは,彼ら自身なのです。 意図せずして他者との間で関係がこじれ,法的紛争になってしまった「難しい依頼者」は,とても孤独であり,弁護士の援助を切実に必要としています。そして法的紛争が良い形で解決することは,彼らの生きづらい人生を少なからず改善する可能性があります。つまり「難しい依頼者」こそ,弁護士による権利擁護を強く求めていると言えるのです。 以上のような観点から本書は,弁護士が「難しい依頼者」との間で信頼関係を築き,円滑に事件を遂行するために必要な知識や対応のコツを示すことを目的としました。 しかし,このような「難しい依頼者」への対応という課題は,弁護士だけが遭遇しているわけではありません。司法書士,行政書士,あるいは,それぞれの事務所の事務職員の方々など,すべての法律関係者は,弁護士と同様に法的問題を抱えた「難しい依頼者」と日々出会っているはずです。そして,「難しい依頼者」からの長電話や何十通ものメールに疲弊したり,怒声に震撼したり,長々と続くすすり泣きに辟易したりしているのではないでしょうか。良い関係の中で,依頼者に最適な法的サービスを提供したいと思いながら,それができずに苛立つことが少なくないはずです。 本書で掲げる事例は,筆者にもっとも身近な弁護士を主人公として作成しています。また具体的なスキルは弁護士を想定したものが中心です。しかしそれらのエッセンスは,同じ法律専門職,法的サービスの提供者として,司法書士や行政書士の方々,また事務職員の方々にも,きっと役立つことと思います。 本書は,「難しい依頼者」には,臨床心理学的・精神医学的にみてiiiはじめにすべての法律専門職に共通する課題であること依頼者の「難しさ」とパーソナリティ障害

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