時効理
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第1章 時効総論 32)ただし,現行民法564条(565条で準用される場合を含む。),566条3項の期間制限に相当する規33)請負契約上の瑕疵修補請求権等の期間制限(改正前民法637条)も除斥期間と解されており(最判昭和51年3月4日民集30巻2号48頁),この期間制限の趣旨も,改正民法637条でも変わらないと考えられる。34)民法234条2項に基づく建築の中止・変更請求権も裁判外の行使で足りるとされている(大判昭35)もっとも,改正前から,除斥期間と構成することの不都合を修正するために,時効停止に係る規定の準用がなされ(最判平成10年6月12日民集52巻4号1087頁,最判平成21年4月28日民集63巻4号853頁),また,起算点である「不法行為の時」の操作による調整もなされてきていた(最判平成16年4月27日民集58巻4号1032頁,最判平成16年10月15日民集58巻7号1802頁)。今回の改正は,かかる判例の状況も考慮して,時効期間に改めたものと説明されている。36) 改正法附則35条1項は「旧法第724条後段…に規定する期間がこの法律の施行の際既に経過していた場合におけるその期間の制限については,なお従前の例による。」とされるため,判例に基づく長期の期間制限を除斥期間とする扱いは,相当長期に当たり存続するものと思われる。 また,請求権に係る期間制限については,売買の担保責任に係る規定の期間制限(民法564条,566条)があるところ,判例は,当該期間制限を除斥期間と解し,当該期間内に少なくとも裁判外で権利行使をすることを求めていた(最判昭和48年7月12日民集27巻7号785頁,最判平成4年10月20日民集46巻7号1129頁,最判平成13年11月27日民集55巻6号1311頁)。改正民法では,買主の負担軽減の観点から期間制限内に損害賠償のためにしなければならない行為が「損害賠償の請求」から「通知」に変更されたが,この期間制限の法的性質や趣旨自体は,改正民法566条でも変わらないと考えられる。32)請負契約上の担保責任に基づく損害賠償請求権(民法637条。改正民法637条1項参照。大判昭和5年2月5日大審院裁判例4巻民32頁)33)や,賃貸借契約に基づく費用償還請求権(民法621条(改正民法622条),600条。大判昭和8年2月8日民集12巻60頁)についても同様に裁判外の行使で足りる。34) なお,不法行為による損害賠償請求権のうち長期の期間制限については,判例は除斥期間であるとしてきたが(最判平成元年12月21日民集43巻12号2209頁),改正民法724条は「時効によって消滅する」と規定している。(一般論としては「時効によって」という文言が決め手にならないとされつつも)法改正の沿革から見て,これは時効期間に改める改正がなされたということでよいであろう。35)36)12する見解も有力である。そうした見解は,特に形成権について除斥期間が定められている場合には,形成権行使の結果生じる請求権も含めて,形成権に係る除斥期間内に権利行使をすべきであると主張する。ただし,そうした処理を認めた判例は確認できない。定は,改正民法には設けられていない(570条が準用する566条3項の場合を除く。)。和6年11月27日民集10巻1113頁)。

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