時効理
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第2 時効の効果を主張する要件第1章 時効総論 40)例えば,免責決定の効力を受ける債権は,もはや権利行使を観念することができないことから,41)用益物権である地役権については,民法291条で「債権又は所有権以外の財産権」に該当する趣42)ただし,抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合には,被担保債権自体の消滅時効の進行を観念できないことから,民法396条は適用されず,原則に立ち返って債務者及びうものであるとして,学説上,有力に主張されている。 もっとも,現時点では,判例が承認するには至っておらず,個別の抗弁権ごとにその主張の可否を検討していくべきことになると思われる。141 消滅時効の対象となる権利 現行民法167条1項及び同条2項(改正民法166条1項及び同条2項)は,消滅時効にかかる権利について,「債権」及び「債権又は所有権以外の財産権」と包括的に規定している。 「債権」については,主債務者について免責等がなされた場合に,当該主債務の消滅時効を保証人が援用できるかという文脈で,もはや消滅時効の対象となる「債権」ではないとされた例がある。40) 「債権又は所有権以外の財産権」の典型例としては,用益物権(地上権,永小作権等)が挙げられる。41) 担保物権についても,文言上,「債権又は所有権以外の財産権」に該当し得るし,それを前提とした判例もある(大判昭和15年11月26日民集19巻2100頁)。ただし,抵当権の被担保債権の債務者及び抵当権設定者については,民法396条が特則として,抵当権は,債務者及び抵当権設定者に対しては,その担保する債権と同時でなければ,時効によって消滅しないと規定し,現行民法167条2項(改正民法166条2項)の例外を定めている。42)これに対して,第三消滅時効の進行を観念できず,免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は,その債権についての消滅時効を援用することはできない(最判平成11年11月9日民集53巻8号1403頁,最判平成30年2月23日裁時1694号3頁)。また,破産終結決定がされて法人格が消滅した会社については,これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべきであり,時効消滅も観念できないため,保証人は主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成したことを主張してこれを援用することができないとされる(最判平成15年3月14日民集57巻3号286頁)。旨が明記されている。

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