第2章 民法一般 及び商事消滅時効(商法522条)の制度は廃止されることとなった。1242 時効障害事由(更新・完成猶予) 改正民法では,改正前民法の「中断」が「更新」に,「停止」が「完成猶予」に置き換えられた。時効障害事由に関する用語が変更された趣旨は,時効の「中断」という表現は,時効の進行が一時的に停止しその後に途中から再開されるという誤解を招き易いことなどを考慮し,「中断」及び「停止」の各概念について,その意味内容をより適切に表現し得る用語に改める点にある。 用語の変更は,「中断」及び「停止」という従来の概念の意味内容自体を変更するものではないが,「更新」及び「完成猶予」をもたらす事由の捉え方については,再編成がなされている。 すなわち,時効の「更新」事由については,従前の時効期間の進行が確定的に解消され,新たな時効期間が進行を始める時点を示すべき事由をもって把握することとし,その更新事由に係る手続の進行中(及びその手続が更新事由を構成せずに終了した場合には,その終了時点から6か月を経過するまで)は時効の完成が猶予されることになる。したがって,改正前民法では時効の中断事由とされていた裁判上の請求や差押え等については,それらの手続の申立ては完成猶予事由となり,確定判決等による権利の確定や強制執行等の手続の終了をもって更新事由となる。 また,改正前民法158条から161条において時効の停止事由とされていたものは,改正民法においても,基本的に従前の内容のまま完成猶予事由として規定された(改正民法158条から161条)。 なお,改正民法が定める時効障害の規定は,債権の消滅時効のみならず,その他の権利の消滅時効や取得時効といった時効一般に適用される規律である。3 援用権者の範囲 改正前民法145条は,時効は「当事者」が援用しなければ裁判所はそれに
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