時効理
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第2章 民法一般  従来の客観的起算点(「権利を行使することができる時」)から10年間という時効期間に加えて,主観的起算点(「債権者が権利を行使することができることを知った時」)から5年間をも時効期間とする二元的な構成を採用し,いずれか早い方の期間が経過したときに消滅時効が完成するものとした。客観的起算点については,改正前民法下の規律から変更はなく,「権利を行使することができる時」の解釈をめぐっては,改正前民法下と同様の解釈に委ねられている。主観的起算点は,権利行使が期待可能な程度に,権利の発生及びその履行期の到来その他権利行使にとっての障害がなくなったことを債権者が知った時を意味すると考えられている。126解 説 平成29年5月に可決成立した民法改正法案によって消滅時効の起算点はどのように変わるのか。1 客観的起算点と主観的起算点の二元的構成 改正民法は,改正前民法が採用していた客観的起算点(「権利を行使することができる時」)から10年間という時効期間に加えて,主観的起算点(「債権者が権利を行使することができることを知った時」)から5年間をも時効期間とする二元的構成を採用し,いずれか早い方の期間が経過したときに消滅時効が完成するものとした。 契約に基づいて生じる一般的な債権については,権利発生時にその権利行使の可能性を認識しているのが通常であることから,主観的起算点と客観的起算点は基本的に一致して,その時点から5年間で消滅時効にかかることになる。他方で,契約に基づくものであっても,説明義務や安全配慮義務等の付随義務違反に基づく損害賠償請求権については,客観的起算点と主観的起消滅時効の起算点はどのように変わるのか 2

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