時効理
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はしがき 本書は,時効をはじめとする法律上の「期間制限」について,法曹実務家である筆者らが包括的に検討した実務書である。 周知のとおり,2017年に成立した債権法改正により,時効に関する規定についても大幅な改正が加えられた。これをきっかけに,日本加除出版より,時効について,債権法改正をも踏まえた決定版と言える書籍を作りたい,という,身に余る有り難いお話をいただいた。しかし,時効については定評のある先行書もいくつかあり,債権法改正を踏まえたとしても,単に時効のみを取り上げるのであれば,新たに一書をものする意味に乏しいとも感じられた。 そこで,本書においては,時効を中心としつつも,それに限らず,提訴期限や行政機関への諸届の期限,逆に行政機関側が行政処分を行う際の期限等々,広く法律上定められている「期間制限」を,可能な限り網羅的に取り上げて検討することにした。その際,訴訟・保全・執行や倒産などの通常の民事実務の場面に加えて,筆者らの所属する岩田合同法律事務所は企業法務を専門的に取り扱っているという特色を活かし,M&A,ファイナンス,独禁法,知的財産法,人事労務,税務といった,企業取引において問題となるさまざまな場面における「期間制限」について,それらの類型ごとに問題を取り上げて整理することを試みている。また,海外の法律事務所とのネットワークを活かし,主要な外国における消滅時効制度についても紹介することとした。 他方で,期間制限の基本中の基本である時効については,我が国の民法の沿革や比較法など,法制度の基礎に改めて立ち返った上で債権法改正を位置付けようとする総論的な検討も試みた。この部分については,法曹実務家による実務書らしからぬアカデミズムの香りを,若干とは言いながら持たせることができたように思う。 以上の工夫により,本書は,債権法改正や,「時効法」の理論的基礎も踏iはしがき

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