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3主眼が置かれているのに対し、中教審「チーム学校」答申が想定する「チーム学校」の構成員としての弁護士の役割は、民事介入暴力の一種たる「教育対象暴力」を行う保護者の対応に主眼が置かれている。前者は子どもの権利を専門とする弁護士が中心の職域であるのに対し、後者は民事暴力介入を専門とする弁護士が中心の職域であり、両者の弁護士の価値観は相当に隔たるといえる7。 そもそもスクールロイヤーは弁護士業界の一部で提唱される弁護士像にすぎず、一般的に定まっているものではない。また、弁護士業界はこれまで弁護士と教育現場の関係の中でスクールロイヤーを独立した職域として積極的に議論していたわけでもない8。つまり、本設問に対する適切な回答がない状況で文科省による制度導入がまさに始まろうとしているのである。 現況では、スクールロイヤーは一般的に「学校設置者からの委託を受けて教育現場に対する相談や助言を行う弁護士」と理解されており、文科省や「チーム学校」答申が想定する弁護士像にもおおむね合致するし、実際にこのような理解に基づくスクールロイヤーの実践も既に存在する9。しかし、この理解の問題点は、スクールロイヤーを学校設置者の委託を受けた弁護士として理解するため、保護者や子どもの代理人として教育現場と関わってきた弁護士がスクールロイヤーの理解から排除されてしまうことである。また、スクールロイヤーは子どもや保護者の側ではなく学校設置者の側に立つ弁護士であることから、「スクールロイヤー=子どものための弁護士」と理解することは難しい。「スクールロイヤー」という語からは、スクールカウンセラー等の職種と同様に学校に非常勤で勤務する専門職員に近いイメージを受けるが、実際のスクールロイヤーは学校に勤務しないどころか、紛争が発生しない限り学校にはほとんど現れないし、児童生徒や教員の日常生活にもほとんど関与しないため、「スクールロイヤー」という語のイメージがもたらす弁護士像とかけ離れることこそがスクールロイヤー制度の最大のリスクであるとも考えられる10。 このようなリスクを回避するためには、スクールロイヤーを「学校設置者からの委託を受けた弁護士」だけに名称独占させるのではなく、子どもや保序章 スクールロイヤー

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