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6の単純化された思考に同調する弁護士も多いが、スクールロイヤーを担当する弁護士にはより正確な教育現場の実情を認識する姿勢と機会が必要である。 また、スクールロイヤーはできる限り教育学の学術レベルの知見に触れておくことが望ましい。教育紛争は誰もが経験する教育という領域の紛争であるため、紛争解決の場面では弁護士であっても自らの教育経験や保護者としての経験に基づく教育観に影響されやすい。そのため、客観的で実証的な教育学の学術的視点を踏まえて、できる限り経験則に基づく主観的な教育観を排除して紛争解決に当たる必要がある。 一方で、筆者はスクールロイヤーには教員経験は必要ではなく、教員免許も必要ないと考えている。筆者自身は教員として学級担任や教科指導等の校務分掌を担当しているが、スクールロイヤーの全てに教員経験や教員免許を要求することは非現実的だけでなく、教員経験に基づく紛争解決に固執し、かえって法的に適切な解決が阻害されてしまう可能性も否定できない。もっとも、教員は「同業者意識」の強い職業なので、スクールロイヤーになる弁護士に教員経験や教員免許があれば教育現場の教員からは信頼感は得られやすいし、説得力を持たせることも容易であろう。 また、一般的に弁護士は裁判経験が豊富なほうがよいが、教育紛争は子どもの意思を尊重し、継続的な学習機会の保障に配慮する必要から裁判になじまない紛争が多いことから、スクールロイヤーには必ずしも裁判経験が豊富な必要はなく12、かえって裁判経験が豊富な弁護士は裁判による解決を志向しがちであるため、必ずしもスクールロイヤーの適性があるわけではない。 スクールロイヤー制度の導入に際しては、弁護士会で現職教員による弁護士向けの研修や現職教員と弁護士の交流や情報交換の機会を増やすことも不可欠である。弁護士会では子どもの権利や教育問題に関する研修やシンポジウムは盛んである一方で現職教員と接する機会は非常に少なく、弁護士が現職教員から教育現場の実情を直接知る機会が非常に限られている状況が弁護士の教育現場に対する誤解を生む土壌となっている。通常の弁護士は学校を相手方とした事件で、弁護士の「敵」として現場教員と接する場合がほとんどであり、子どものために献身的に働く現職教員の過酷な日常を知るよりも、序章 スクールロイヤー

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