14_スクロ
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8ことは、利益相反行為との関係で問題が全くないわけではない。もちろん、スクールロイヤーが学校よりも子どもの利益を優先することは制度趣旨から鑑みて当然であり、利益相反の問題は生じないと考えることも可能である。また、スクールロイヤーは委任契約を受けた弁護士として独立性や第三者性を有するため、株式会社の監査役に類似する立場として、子どもの最善の利益のために学校や教員の行為の適法性を監査する立場であると考えるならば、利益相反の問題はさほど懸念には及ばないとも考えられる13。しかし、教育紛争は利害関係が非常に複雑である点が他の紛争と異なる特徴であり、子どもの最善の利益を適切に判断することは容易ではない。 例えば、文科省がスクールロイヤー制度の主眼として想定するいじめ紛争では、「被害者」「被害者の保護者」「加害者(通常は複数)」「加害者の保護者(通常は複数)」「教員(学級担任など)」「管理職教員(校長など)」「学校設置者」と、最低でも7種の利害関係を異にする関係者が存在する。このような複雑な利害関係等を、スクールロイヤーが学校設置者から委託を受けた立場で利益相反行為に抵触することなく、子どもの最善の利益を適切に判断していじめ問題を解決することは現実的に非常に困難である。また、学校設置者と教員の利害が対立する労働問題でいずれの利益を優先すべきか判断が難しい場合にもスクールロイヤーの利益相反の問題が生じ得る。このため、スクールロイヤーが子どもや保護者と直接面談する場合や、教員から直接労働相談を受ける場合は、学校設置者からの委託を受けた立場であることを相手に明確に示した上で対応することが必要になる14。 実は、学校設置者の委託を受けた外部専門家に利益相反の問題が生じ得る点はスクールロイヤーに限られない。例えば、学校設置者から委託を受けたスクールカウンセラーは、児童生徒に対する守秘義務を負う立場にある一方で、児童生徒のカウンセリング内容を学校と情報共有すべき立場でもある点で、スクールロイヤーと同様に利益相反の問題が生じ得る。しかし、スクールロイヤーは弁護士として法令により利益相反が厳格に禁止され、利益相反行為の場合には懲戒処分を受ける可能性がある点で、他の外部専門職以上に利益相反の問題は重要なはずだが、スクールロイヤーを導入する現段階でも序章 スクールロイヤー

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