9そのような議論はほとんどなされていない。 スクールロイヤーは子どもの最善の利益を実現するために導入される制度であり、子どもの最善の利益を擁護する「オンブズパーソン」たる職域と理解すべきだが、学校設置者から委託を受けた立場を捨象できないスクールロイヤーが、利益相反を生じさせずに子どもの最善の利益を最優先に考慮して教育紛争を解決することは、現実には非常に困難であることも認識しなければならず、スクールロイヤーは教育紛争の複雑な利害関係を的確に理解し、利益相反行為に注意する必要がある。 なお、学校教育法37条4項で「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」と規定していることから、スクールロイヤーが教員に相談や助言をする業務が「校務」に含まれ、かつ学校設置者の委託を受けた立場である者も「所属職員」に含まれるのであれば、スクールロイヤーの活動は校長の校務監督権に服することになり、利益相反の問題だけでなく、弁護士の職務上の独立性や第三者性に抵触する余地もある。てください。して相談や助言を行うため、法的な視点だけでなく教育現場の実序章 スクールロイヤー13 もっとも、監査役は株主総会で選任されることから、選任過程で株主の意思が反映されるのに対し、スクールロイヤーは学校設置者の一存で選任され選任過程で子どもの意思が反映されるわけではないことから、スクールロイヤーと学校設置者の委託関係を監査役と株式会社の関係と同列に扱うことは無理がある。どちらかと言えば、監査役の立場は自治体の教育委員や学校法人の監事の立場に類似すると考えられる。14 スクールロイヤーが子どもの利益を保護することは学校の利益を保護することにつながることから利益相反に該当しないという考え方は、理念的には十分あり得るが、実際にそのようなスクールロイヤーが学校や教員からの信頼を得られるかは別問題である。スクールロイヤーを担当する弁護士は、このような理念はあくまでも弁護士目線に立ったものであることを自覚しておかなければならない。スクールロイヤーと顧問弁護士の違いQ4スクールロイヤーと自治体や学校法人の顧問弁護士の違いを教えA4スクールロイヤーは学校設置者だけでなく、教育現場の教員に対
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