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説解  学校設置者である地方自治体や学校法人が顧問弁護士を付けている場合は、教育現場で紛争が生じたら顧問弁護士が相談や助言を行う。スクールロイヤーも学校設置者からの委託に基づき相談や助言を行う点で顧問弁護士と類似するが、顧問弁護士よりも教育紛争に特化して相談や助言を行う点で、異なる点もある(表2参照) 。 例えば、顧問弁護士は通常学校設置者に対する相談や助言を行うが、スクールロイヤーは学校設置者に限らず、教育現場の教員に対しても相談や助言を行い、事案によっては利益相反にならない範囲で子どもや保護者からの相談や助言を行うこともあり得る。この点はスクールロイヤーの存在意義とも関わっており、顧問弁護士はあくまでも法的視点からの相談や助言を行えばその存在意義は十分だが、スクールロイヤーは法的視点だけでなく教育現場の実情に応じた相談や助言を行わなければ存在意義が見出せない。例えば、同じクラスの生徒同士のけんかでは当事者である生徒及び保護者の言い分や事実認識が異なっている場合が多く、学級担任は生徒や保護者の対立が学級経営に影響しないよう苦慮しなければならない。このような場合、顧問弁護士であれば法的視点から「生徒同士のけんかは学校外での紛争解決に委ねるべきであり、原則として学校は生徒や保護者の対立を解決する法的義務はなく、保護者に対しては毅然と対応すべきである」という回答をすれば、その役割は果たしたことになろう。しかし、弁護士の助言に沿って保護者に毅然と対応しても、自分が担任するクラス内の生徒や保護者の対立は温存されたままで、日常的かつ継続的に生徒や保護者と接する学級担任の負担が軽減されるわけではないから、スクールロイヤーが顧問弁護士と同様の法的視点のみの回答しかできないのであれば、教員の負担を軽減するために導入された制度趣旨に沿わない。この場合、スクールロイヤーは少なくとも学級担任からクラスの状況等を直接聞き取った上で、生徒や保護者の性格や家庭環境等情に応じた相談や助言を行う必要がある点で顧問弁護士と異なります。また、訴訟による紛争解決を前提としない相談や助言を行う点も顧問弁護士と異なります。序章 スクールロイヤー10

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