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13ため、被用者として使用者たる学校設置者に従属的に相談や助言を行う(民間企業などの社内弁護士と同様の立場)。そのため、学校内弁護士は学校設置者との関係ではスクールロイヤー以上に利益相反の問題が生じやすく、例えば、被用者である他の教員からの労働関係の相談は、学校内弁護士自身が被用者である以上、受けづらい立場にある。 一方、スクールロイヤーが利益相反の関係で弁護士として子どもや保護者に対する相談や助言が原則として困難である場合であっても、学校内弁護士は教員として子どもや保護者に対する相談や助言を行うことが可能であり、例えば、いじめ紛争において、学校設置者から委託を受けた弁護士であるスクールロイヤーが利益相反の関係から直接相談や助言を行うことが難しい被害者に対しても、学校内弁護士ならば教員としての立場から相談や助言を行うことができるし15、加害者に対しても教員としての立場から適切な指導を行うことができる。 学校内弁護士は原則として教員免許が必要であり、教育活動に関与するための知識や経験も必要になるため、一般の弁護士にとってはハードルが高いが16、スクールロイヤーと比較した学校内弁護士の最大の利点は、「教員」という立場を活かして「弁護士」が実現すべき人権擁護活動を実践できる点であり、前述のようにいじめ問題においてスクールロイヤー以上の役割を発揮できるため、文科省が想定するスクールロイヤー事業を最も効果的に実現できる職域でもある。したがって、筆者としては、スクールロイヤーの拡充だけでなく、将来的には一人でも多くの学校内弁護士が増えることが子どもの最善の利益の観点からは不可欠と考えている(スクールロイヤーが学校の組織内弁護士として雇用されるメリットとデメリットについては、Q170参照)。 表3 スクールロイヤーと学校内弁護士の比較学校設置者との法的関係校長との法的関係教員免許の要否主な業務助言のタイミングスクールロイヤー序章 スクールロイヤー学校設置者との雇用契約校長の監督下で助言必要教員としての業務も行う日常的に助言学校内弁護士学校設置者との委任契約独立した立場から助言不要弁護士としての業務のみ紛争が発生した場合に助言

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