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15ているスクールロイヤー事業や、筆者が現在実施しているスクールロイヤー事業の大半はこの形態である。この形態はスクールロイヤーが学校に赴いて教員から直接相談を受けることは想定されておらず、むしろ校長などの管理職が教育委員会を介して弁護士の相談や助言を依頼する、という流れが中心だが、学校設置者の顧問弁護士との役割の違いが明確でないため、スクールロイヤーを担当する弁護士自身が教育法や学校法務に詳しい弁護士でなければ独自の存在意義を見出し難い。 ②はスクールロイヤーが教育委員会の委託に基づき、教育紛争が発生した学校からの要請に応じて、学校に直接赴いて相談や助言を行う形態で、現状のスクールソーシャルワーカーで最も多い形態がこの「派遣型」であることに鑑みると、スクールロイヤーの場合も「派遣型」が中心になる可能性が考えられる。また、勤務時間や人員の確保の点からも予算上の制約が少なく、学校設置者としては最もスクールロイヤーを導入しやすい形態と言える。 ③はスクールロイヤーごとに担当地域を割り当て、各地域の複数校を定期的に巡回して相談や助言を行う形態であり、①②よりも定期的に学校に直接赴く機会がある点にメリットがある。 ④はスクールロイヤーが定期的に学校に勤務し、日中は職員室や専用個室などで執務する形態であり、スクールカウンセラーでは一般的な形態であって、スクールソーシャルワーカーでも一部の自治体で導入されている。 ⑤はスクールロイヤーが教員として学校に勤務する形態であり、筆者が実践する「学校内弁護士」はこの形態で、①~④の形態と決定的に異なる点は、スクールロイヤーが弁護士だけでなく教員の立場を併有することである。 ①~③の形態は弁護士の職務上の独立性や第三者性を重視しており、予算上の制約を考慮すれば導入しやすいメリットがあるが、スクールロイヤーが教育現場に日常的かつ直接関与する機会が少ないことから、教員との信頼関係を構築しづらく、児童生徒や保護者の実態も把握しづらい。そのため、スクールロイヤーが教育現場の実情を理解していなければ、学校が求めるニーズを十分理解しないまま相談や助言を行うことで、かえって教育現場の弊害になる可能性すらある。序章 スクールロイヤー

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