これに対し、④と⑤の形態はスクールロイヤーが教育現場に日常的かつ直接関与する機会が多いことから、教員との信頼関係を構築しやすく、児童生徒や保護者の実態も把握しやすい。また、学校に勤務する際には職員室等で他の教員と交流する機会も多いため、スクールロイヤーが収集できる情報量は①~③よりも格段に多く、教育現場の実情を理解できる機会も多い。スクールロイヤーが教育現場に日常的かつ直接関与できる④と⑤の形態は、弁護士を含む「チーム学校」構築の観点からも望ましい。 特に、⑤の形態はスクールロイヤーが弁護士としてだけでなく教員としても教育紛争の解決に関与し、授業その他の学校の教育活動それ自体に関わることができる点で、スクールロイヤーの理念を最もよく体現できる形態であり、筆者としては最も適切な形態であると考える18。しかし、「教員兼務型」スクールロイヤーは、学校設置者との間で委任関係ではなく雇用関係に基づく形態であるため、弁護士としての職務上の第三者性は大きく後退してしまう上に、スクールロイヤーが教育活動に関わるとすれば、弁護士活動が校長の校務監督権(学校教育法37条4項)に服することになり、弁護士の職務との整合性に問題が生じる(もっとも、この点は前述のとおり、「校務」「所属職員」の解釈によっては②③④型のスクールロイヤーも校長の校務監督権に服すると解される余地が生じる)。また、「教員兼務型」スクールロイヤーは原則として教員免許を保有する弁護士でなければ担当できないため、人材確保が非常に難しい。 このため、筆者としては教育現場に日常的かつ直接関与できる上に、現実的にも導入しやすい④の「学校配置型」スクールロイヤーが最も望ましい形態であると考える。実際に、スクールソーシャルワーカーの業務においても、「派遣型」「巡回型」よりも「学校配置型」のスクールソーシャルワーカーのほうがメリットが大きい点が知られている。 以上のように、スクールロイヤーを教育現場で長期的に定着させる視点からは、人材確保や予算の制約などの理由で中途半端な「派遣型」の形態を採用するよりも、弁護士が教育現場に日常的かつ直接関与できる「学校配置型」の形態を採用すべきであろう(なお、日弁連の意見書では、「地域ごとのブロックに担当弁護士を置く」「指定校への配置」「中学校を拠点巡回」等の方法が記載されている)19。序章 スクールロイヤー16
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