※ 自殺は原則として災害共済給付の対象ではないが、いじめ・体罰による自殺は対象になる。に生じた損害を補填しようとするスタンスである。このため、生徒間のけんかから生じた治療費等、いずれの当事者に過失があるか明確でない場合でも、学校教育の円滑な運営の観点から災害共済給付の給付が行われる。また、災害共済給付の要件である「学校の管理下」の災害についても緩やかな解釈で運用され、授業、学校行事、部活動、校外活動、休憩時間、放課後、通常の経路及び方法による登下校中等、あらゆる時間や場所が「学校の管理下」に該当するため、災害共済給付が支給される対象範囲は非常に広い(ただし、部活動で学校の休業期間に校外で自主練習中に死亡した事故は「学校の管理下」に該当せず、災害共済給付が支給されないとした裁判例1がある)。 学校事故の初期対応では保護者に事実関係や対応方針を適切に説明することが望ましいが、保護者にとって治療費等の損害は重大な関心事なので、その際には災害共済給付の説明も重要になる。ところが、現実の教育現場では必ずしも各自の教員が災害共済給付の仕組みを理解しているわけではなく、研修で重視されているわけでもないので、学校事故において保護者に適切な初期対応を行う上でも、スクールロイヤーが行う研修等により教員各自が災害共済給付の仕組みを十分理解しておくことが望ましい(スクールロイヤー自身も、災害共済給付の仕組みなどを理解しておく必要がある)。 なお、生活保護受給者が被害者の場合、医療扶助により医療費負担がないことから災害共済給付による治療費等の給付は行われない(共済掛金の金額も異なる)。災害共済給付契約は保護者の同意を得て、学校設置者が手続を行うが、外国人が当事者の場合、日本語の理解の問題から同意が確認されていない場合が稀にあるので注意を要する。表1 災害共済給付第2章 教育紛争の典型と問題126災害の種類給付金額医療費総額の10分の4障害見舞金82万円〜3770万円傷害・疾病で治療費総額が5000円以上後遺障害死 亡※通学中の災害は半額死亡見舞金2800万円※通学中・運動等以外の災害は半額
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