説解 学校事故で学校が法的責任を負う範囲として、判例や学説は「学校の教育活動の一環であり、教育活動と密接に関連する活動」に関しては学校の法的責任が及ぶと解するが、この判断基準はあいまいであり、学校が法的責任を負う具体的な活動内容、時間、場所は個別の事案に応じて検討される。 判例は学校教育と密接に関連する活動を広く捉えており、活動内容、時間、場所を厳密に検討して学校の法的責任の成否を判断せずに、あらゆる活動内容、時間、場所が学校教育と密接に関連すると広く捉えた上で、教員個人の事故に対する具体的な予見可能性を中心に学校の法的責任の成否を判断する(この点は、災害共済給付の要件である「学校の管理下」が緩やかに解されていることと関連する)。例えば、休み時間中の学校トイレ内で発生した中学生同士の暴行事件で、「授業時間、休憩時間等学校内における時間割りは当該学校の教育的判断から決められ、生徒はそれに従って学校施設内で生活活動を行っているのであるから、教育活動やこれと密接不可分の関係から生じたものではないと解するのは相当ではない。むしろ、本件暴行が休憩時間中に発生したという点は、本件暴行の発生の予見可能性の有無の一事情として、考慮すべきものというべきである」と判示する裁判例9が参考になる。 しかし、筆者は判例のように教員個人の事故に対する具体的な予見可能性を中心に検討するのではなく、まず学校事故が起きた教育活動、時間帯、場所の特徴を教育現場の実情を踏まえて的確に理解した上で学校の法的責任の成否を検討すべきであると考えている。表2は教育活動、時間帯、場所に応じて、 学校事故における学校の法的責任を判断する際に検討すべき特徴をまとめたものである。 表2-1のとおり、学習指導要領上の教育課程に含まれる授業中や特別活動中に生じた事故で学校が法的責任を負う可能性があることに異論はない。しかし、部活動は学習指導要領で「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること」とされているものの、あくまでも教育課程外の活動であり、かつ学習指導要領が「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」活動と規定することや、当該教科の教員免許を有する教員が担当第2章 教育紛争の典型と問題132
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