筆者の前作である『学校内弁護士 学校現場のための教育紛争対策ガイドブック』は、「学校内弁護士」という弁護士の新しい職域を紹介することが主なテーマであり、教育紛争の解決に関する実務的な争点に関しては、新しい議論を提起することに主眼を置いたものであって、法的論理に関しては稚拙な面が否めませんでした。しかし、本書は議論の提起だけでなく、多少なりとも前作より説得的な法的論理を展開することで、新たな教育政策として導入される「スクールロイヤー」に期待される存在意義と議論すべき課題について、弁護士や教員だけでなく、学校設置者、教育行政担当者からスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の外部専門家、そして子どもや保護者に伝えたいという想いを詰め込んでいます。 スクールロイヤーは定義が定まっていない弁護士の職域であり、その言葉のイメージから「毎日学校に常駐する弁護士」と誤解されるほど的確な議論がなされない状況で政策として導入され、かつ弁護士業界も積極的に推進しているため、様々なリスクを抱えています。しかし、日常的に多忙な業務に追われる教員や、いじめで苦しむ子どもたちや保護者にとって、「スクールロイヤーがいれば何とかしてくれるのではないか」という期待を抱かせるイメージがあるのも事実であり、スクールロイヤーが教育現場と弁護士の関わり方を大きく変える動きになることは間違いありません。筆者も、スクールロイヤーを担当する弁護士が1人でも増えることで、教育現場の実情を理解してくれる弁護士が1人でも増えることを大いに期待しています。 ただし、スクールロイヤーが定着するためには、2つのことを忘れてはなりません。 1つは、文科省、裁判所、弁護士の三者が、それぞれの立場で教員に多大な負担をかけてきたことを認識し、反省することです。文科省はいじめ防止法等の法令やガイドラインを積極的に制定しても、適切に執行するために必要な教育予算を十分に獲得してこなかったため、教育現場の教員は少ない教おわりに458お わ り に
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