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i 本書は、現職の高校教員と弁護士を兼業する筆者が、「教師」と「弁護士」の異なる視点を融合させて、スクールロイヤーを担当する弁護士と、教育紛争に対応する教師の先生方のお役にたてればと思い、170問に及ぶQ&Aを1冊にまとめたものです。 2016年に、文部科学省が概算予算要求の中で初めて政策として「スクールロイヤー」という語を使用して以来、教育関係者だけでなく法律家の間でも注目が集まっているスクールロイヤーですが、2018年1月に日本弁護士連合会が発表した「『スクールロイヤー』の整備を求める意見書」は、「子どもの最善の利益」を実現する観点からスクールロイヤーが活躍できる様々な場面を紹介しています。この意見書は保護者のクレームを「教育対象暴力」と称してモンスター・ペアレント対策としてスクールロイヤーを普及しようとする一部の動向を牽制する意義を持っており、筆者も素晴らしい意見書だと考えていますが、同時にスクールロイヤーにとって最も必要な知識は、子どもの権利ではなく教育現場の実情に関する知識であるとも考えています。 本書は、そのようなスクールロイヤーにとって必要な知識を、170に及ぶ設問にまとめました。どの設問も教育現場では日常的に起きるケースですが、これまで法律家が正面から議論しておらず、他の弁護士の類書では掲載されていない争点も多数取り上げており、教員と弁護士の双方の視点を併せ持つ筆者の立場から、「教師の思考」と「弁護士の思考」の2つの思考を提示しつつ、スクールロイヤーに必要不可欠な知識を解説しています。また、本書の設問には、現役教師である筆者ならではの願いとして、一人一人人格と個性の異なる子どもたちと日々接する先生方が、マニュアル的な対応ではなくそれぞれの教員経験を踏まえて個別具体的な対応を考えてほしいという願いから、あえて結論を明示しない設問も含まれています。 本書が教員と弁護士の異なる日常と思考の「架橋」となる役割を担うことができれば幸いです。はじめには じ め に

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