りますが、それでも未来ある子どもたちのために自分の人生をかけて日常的に貢献することができる教員のやりがいには及ばないと感じるし、たとえ人工知能がどれほど発展しても、子どもに心から寄り添うことのできる優秀な教員には比肩できないでしょう。 しかし、現実の教員は今や数ある職業の中でも「ブラック」の烙印を押される不人気職業です。教員が不人気である実情を招いた一因に我々弁護士の教育現場に対する無理解が存在するのならば、スクールロイヤーは弁護士にとって教育現場の実情を理解し、その信頼を得る絶好の機会であり、教員という仕事の魅力を日本社会に伝えられる役割を果たせるかもしれません。 スクールロイヤーの最大の使命は、弁護士が教育現場と接点を持つことにあります。そのことによって今の日本の教育現場で子どもの権利を守るためには教員数を増やすことが必要不可欠であることを弁護士が認識し、社会に提言していくことができれば、スクールロイヤーの導入は日本の教育に大きな成果をもたらすことができます。学級担任や部活動顧問に代表されるように、日本の教育制度は世界でも例を見ないほど教員にとって負担の大きい教育制度ですが、同時に世界でも例を見ないほど子どもたちと人間的に接することができる教育制度でもあります。そのような日本の教育制度の長所を活かしつつ、子どもたちの権利を保障し、教員も幸せに仕事ができる学校にするためには、本書で繰り返し述べているように教育予算を確保して教員数を増やすしかないのです。もし、筆者のような教員と弁護士を兼ねた学校内弁護士が増えれば、スクールロイヤーが増えるだけでなく教員も増えることになります。その意味で、学校内弁護士が増えることは子どもたちと教員の双方の幸せに貢献できるので、本書を読んで学校内弁護士の魅力が1人でも多くの人に伝わることを願っています。 「教師が幸せに働ける学校でなければ、子どもも幸せに学べない」という格言は、教育界での暗黙の合意であり、筆者も確信していますが、残念ながら今の日本の学校がこの格言を実現できているとは言えません。だからこそ、スクールロイヤーが「子どもと教師の最善の利益」を実現するために貢献できる存在となれることを心から祈っています。おわりに460
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