な供事
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30 相続人が相続放棄をすれば,相続財産の管理義務も本来は消滅することになりますが,相続放棄後,即時に管理を終了すると,他の相続人や相続債権者に不都合を生じることになります。そこで,民法940条の規定により,同順位の相続人がいない場合には,放棄によって新たに相続人となった次順位者が相続財産の管理を始められるまで,あるいは相続人が不存在となる場合には,相続財産管理人が選任されて職務を始められるまでは,相続放棄者に管理継続義務を課すこととされています(島津一郎・松川正毅編『基本法コンメンタール 相続[第5版](別冊法学セミナー193号)』(日本評論社,2007年)138頁)。 したがって,最終の相続人であるCは,相続財産管理人が選任されるまでの間は,継続して相続財産を管理する義務があることから,Cは,土地売買代金を受領する権限があると考えられます。 よって,Aは,Cに対して,土地売買代金全額について,弁済の提供をして受領を拒否されたのであれば,受領拒否を原因として供託することができるものと考えられます。 なお,本問において供託申請する場合,以下の点に留意する必要があります。1 Cは,飽くまで民法940条の規定により相続放棄者として財産管理義務を負う者であり,自己の名において供託物を受領する権限のある者ではないため,被供託者とはなり得ません。本件の場合,相続人全員が相続放棄をしたことにより,相続財産は法人となり(民法951条),本件供託金還付請求権は同法人に帰属するものと考えられます。そして,同法人は,法人格を有し,供託当事者になり得ることから,被供託者の表示としては不動産登記の記載と同様,「(亡Bの最後の住所)亡B相続財産」とするのが相当であると考えます。2 供託の原因たる事実欄には,Cの住所氏名,Cが民法940条の規定による相続財産管理人である旨,及びCに対して売買代金全額について弁済の提供をし受領拒否された旨を明記します。3 本問売買契約においては,支払場所の定めがないことから,原則として第2 供託の申請手続

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