C olumn 1M&A仲介会社とのトラブル関与する専門家は,個別案件それぞれの特性をよく理解し,その案件にとって適切な方策を取るよう心掛けることが重要となるのです。 スキーム選択については第1部第2章,DDについては第1部第3章,契約については第1部第5章で詳述します。6 第 1 章 中小企業とM&A インターネットで『M&A』や『M&A仲介』という語を検索すると,M&A仲介会社のホームページが多数表示されます。このことからおわかりのとおり,M&Aブティックとも呼ばれるM&A仲介会社の数は増加しているように思われます。このこと自体は,中小企業のM&Aマーケットが拡大するために,有意義であり,歓迎すべきことです。 問題となるのは,全ての会社が適正な業務を行っているのかという点です。M&A取引の仲介については業法規制がありません。このような実状からは,不適正な業務を行っている会社が存在していたとしても何ら不思議ではありません。 私は,かつてM&A仲介会社とのトラブルについて事件を受任したことがあります。その仲介会社は着手金完全無料を謳っており,経営する会社の売却を考えていた依頼者は,競合他社と比較し,主に費用の面から当該会社とM&Aの仲介について契約を締結しました。しかし,依頼者の意向に沿わない買い手しか紹介しないことから,依頼者がM&A仲介会社との契約を解約したところ,仲介会社及びその関係の専門家から費用請求されたという事案でした。 仲介契約の条項が不明瞭なため,専門家との間では訴訟にまで発展しました。幸い請求は棄却されましたが,M&A仲介会社との契約の際には注意が必要と実感した事件でした。
元のページ ../index.html#38