6 簡単にいうと,破産という手続を始めることで,ある時点(破産手続開始決定時)を境として,債務者が有する財産で「破産財団」というものが形成され,「破産財団」の代表ともいうべき「破産管財人」によって,それらの財産を管理・現金化し,債権者に公平に分配する。その結果,破産者は,全ての財産を失いますが,破産手続開始決定時以降は,債権者からの請求を免れ,それ以降に得た新たな財産は,自分のものとして,再スタート(経済的な更生)をすることができ,債権者は,債務者に請求はできなくなりますが,他の債権者とともに,債権額に応じて公平に配当を受けることができます。ただし,債権全額に満たないでしょうから,不足分については,あきらめることになりますが,税務上は「損金」をして計上することができます。 このように,破産法は,債権者と債務者の関係を調整し,債権者に公平な配当をし,債務者の経済的更生を目的とするものです。 しかし,カード破産や消費者破産の債務者は,カードを使って無分別に買い物をしたり,生活費困窮で消費者金融から借金を繰り返したりして破産に至った経緯があるのですから,そういう人たちには預貯金や不動産などの財産は全く無い,というのが実状です。ですから,そのような人が破産しても,債権者に配当することなど到底望めないでしょう。というより,最初から破産財団を構成することもできません。 そこで,破産法216条1項では「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは,破産手続開始の決定と同時に,破産手続廃止の決定をしなければならない。」と規定しています。つまり,破産財団を構成する財産すら無い,又は破産財団ができたとしても,破産手続費用すら支出できないような場合は,破産手続開始と同時に破産手続を終わらせてしまう(「廃止」といいます),ということです。これを「同時廃止」といいます。 先に説明したとおり,破産手続の目的は,債務者の財産を換価し債権者に公平に分配し,債務者(破産者)の経済的更生を図る,ということからすると,この「同時廃止」は例外といえるでしょう。しかし,現在,各地方裁判所に申立てられる破産申立事件の多くがこの「同時廃止」であり,破産事件全体の6割,平成15年~18年頃では7割強を占めていました。第Ⅰ章 知識編
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