i 破産事件は法律問題の坩堝である。法律問題だけではなく,事務作業の集積場でもある。本書は長年法律事務に携わってきた著者が,破産事件,とりわけ自己破産(同時廃止)申立事件について焦点を当てて,的確かつ平易にまとめ上げた事務職員向けの書物である。 本書を見れば,同時廃止事件,管財事件を含めた自己破産の申立ての要領が手に取るように理解ができる。評者も弁護士登録以来30年間,破産事件の申立てはもちろん,(旧)和議事件監督委員,民事再生申立代理人,破産管財人として数多くの倒産事件を取り扱ってきた(その間,著者と共に執務したこともある)。 これらの作業に共通しているのは,的確かつ迅速な大量の事務処理が必須であるということである。正しくなくてはならない。しかし,遅くてはもっとダメなのである。手続きの成功は有能な事務職員と協働できるかどうかにかかっている。 本書は上記のような破産実務に関して,必要かつ十分な情報を判りやすくまとめ上げた,ほかには例を見ない書物と言える。とりわけ,最近の破産実務では申立代理人の役割の重要性が飛躍的に高まっている。破産事件を取り扱う事務職員にはもちろん,経験の浅い弁護士にとっても有益かつハンディーな1冊となることには間違いないであろう。 破産事件は決して後ろ向きの事件ではない。法人にせよ自然人にせよ,債務を整理して新たなステージを迎えるべき重要なステップなのである。本書を片手に,弁護士とともに新しい破産事件に挑んで頂ければと思う。 2018年10月弁護士 塩 野 隆 史(大阪大学客員教授・甲南大学兼任教授)推薦の言葉推薦の言葉
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