iii 気が付けば,現在の法律事務の職に携わって,まもなく30年になろうとしています。 これまで数々の案件に関わり,その都度新たに勉強し,知識を得て,また新たな案件に出会う。そういう作業を繰り返して,今まで得た知識や経験を後進に伝えていこうと考え始めて最初に手がけたものが『スキルアップ 法律事務テキスト』でした。 ありがたいことに,多方面からご好評を頂き,前作の『スキルアップ法律事務 裁判所提出書類の作り方・集め方』まで順調に進んで参りました。 これまでの執筆に加え,大阪弁護士会で開催される「事務職員研修」などで講義をしてきましたが,限られた時間の中で,多岐にわたる法律事務を講義するのは大変難しく,受講者の経験年数・勤続年数にも幅があるため理解の度合いに差があり,それらの問題点を克服することは一つの課題でもありました。 法律事務は,専門性が要求される職業であります。それを習得するための制度が全国的には少なく,日本弁護士連合会での能力認定制度が唯一全国的な研修ではありますが,種々の事情により受講できず多くの事務職員はその能力習得のために独学で学ぶことを余儀なくされているのが実情でしょう。大都市である東京・大阪・名古屋などでは,単位弁護士会で研修が行われていますが,所属事務所の業務や,開催時間の関係で出席できない人も多く,その能力向上のための制度が全国的には整っていないのが現状です。 今回,これまでのスキルアップシリーズの一つとして,破産手続について執筆することとなりました。破産事件の手引書やマニュアルというものは,現在でも多く出版されておりますが,そのほとんどは,◦破産法の解説◦破産管財事件の手引き・解説が多く,事務職員が最初に手がけることが多い「破産同時廃止事件」に特化したものがあまり存在しませんでした。はしがきはしがき
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