1 面会交流事件の概況2 面会交流事件の特徴四頁)。面会交流調停事件は、全国的に増加の一途をたどっています。平成一〇年の申立件数は一六九六件でしたが、平成二〇年には六二六六件となり、平成二九年には一万三一六一件となっています。面会交流事件は、家事事件手続法別表第二事件に区分されるため、話合いの手続である調停が不成立となると、当事者が新たな手続を取ることなく、審判に移行します。審判事件の数を見ると、平成一〇年には二九三件でしたが、平成二〇年には一〇二〇件となり、平成二九年には一八八三件となっています。調停の申立件数と審判事件数からも、増加と困難化が見て取れます。こうした背景には、少子化、離婚の増加、男性の育児参加の増加、価値観や社会経済の構造変化等の社会情勢の変化があるといわれています。また、欧米における離婚が子どもに与える影響に関する研究など海外の知見が広く一般に知れ渡るようになり、単独親権制度を持つ我が国の親権の在り方とも相まって、面会交流に対する社会的関心も高まっています。面会交流事件の特徴として、①子どもの利益を配慮すべきこと、②当事者らの協力を取りつける必要性の高いこと、③面会交流の実施が長期間にわたること、④面会交流の方法が子どもの生育・環境の変化などに合わせて変化していくことの四点が挙げられます(上原裕之ほか『手続からみた子の引き渡し・面会交流』(弘文堂、二〇一七年)八調停や審判により、面会交流の実施が定められていても、当事者間に感情的対立が残っていては、面会交流の履行の確保が難しいのです。そして、同居親、別居親、また事件に関わる関係者は、面会交流を続けていくため 第1章 本書における面会交流の考え方と基本的視点 2
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