12_実調面(右開き)
24/76

⑷ 親を知ることが自我を形成する助けとなる子どもは、父母と接することで、自分が何者であるかというルーツを知ることとなります。また、身近な父と母を、それぞれ男性モデル及び女性モデルとして成長していきます。いずれの点も、子どもが健全な自我を形成するためには不可欠であるといえ、そのためにも、離れて暮らしている親と面会交流を継続することが重要となるのです。面会交流の意義に記載したとおり、子どもの福祉の観点から、別居親と子どもとの面会交流は、基本的には子どもの健全な育成に有益なものであるとの認識の下、その実施によりかえって子の福祉が害されるおそれがあるといえる特段の事情がある場合を除き、面会交流を認めるべきであるとの考え方があります。東京高決平成二五年七月三日(判タ一三九三号二三三頁)は、「夫婦の不和による別居に伴う子の喪失感やこれによる不安定な心理状況を回復させ、健全な成長を図るために、未成年者の福祉を害する等の面会交流を制限すべき特段の事情がない限り、面会交流を実施していくのが相当である」と判示しています。しかしながら、この考え方については、一部から批判があります。すなわち、同居親と別居親は、これまでの夫婦関係や離婚をめぐる争いの中で、相互に相手を信頼することが難しく、面会交流そのものに対する不信感や警戒心をもっている場合も少なくないので、面会交流を実施することが常に子どもの利益に資するわけではないとの視点に基づき、次のように疑問を提起しています。すなわち、①「夫婦間の問題を積み残して父母の関係が相当に険悪なまま、あるいは子どもが拒絶的なまま、無理に決めた調停合意や命令により、子どもにとっては苦痛で酷な面会となっているケースがあることも事実である。」(榊原富士子・池田清貴『親権と子ども』(岩波新書、二〇4 面会交流の考え方一七)一二一頁、一二九頁)、②「親どうしが激しく対立したままで双方が子どもに関わったら、それは他方親への第1章 本書における面会交流の考え方と基本的視点  4    

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る