佐藤友和と小百合は、結婚一〇年目の夫婦で、小学校一年生の長男悠人がいる。悠人の出生と機を同じくして、友和の父仙一は、家を建て替え、友和夫婦は、意に反して同居を強いられた。いわゆる三世代同居家族であった。仙一は、何かにつけワンマンで、大学出の嫁である小百合に何かと辛く当たることが多かった。小百合は、友和の両親との同居解消を繰り返し望んできたが、父親に頭の上がらない友和は、その場その場で小百合に謝って気持ちをなだめるだけであった。悠人の小学校入学を控えた年の正月、友和の次姉が子どもを連れて帰省していた。夕食の後の酒の席で仙一は、夫婦仲がうまくいっていないらしい次姉に、別居するなら二階の洋室を自室に使うよう冗談半分に声をかけた。二階の洋室は、悠人の子ども部屋を予定し、入学を控え学習机を入れたばかりであった。小百合は、自分の思いとは掛け離れた仙一の言葉にショックを受け、「同居を解消できないのであれば悠人を連れて家を出る」と、友和に我慢の限界を訴えたが、友和は、些細な酒の席での父の戯言だと思い、小百合の心情に思い至らず、まともに取り合わなかった。翌日、小百合は、悠人に対し、小百合の実家の父親の介護のためにしばらく家を出ると説明して、悠人と一緒に家を出ようとしたが、友和の両親に見咎められ、単身追い出されてしまう。小百合は、ショックのためしばらく心療内科に通うほど体調を崩したが、体調の軽快を待って、一番の希望である悠人の引き取りの方法について法テラスで相談し、その後、家庭裁判所の手続案内に出向き、まずは悠人と会うことを求めて、友和に対し、面会交流調停を申し立てることとなった。1 ストーリー概要 第2章 調停委員会による調整事例╱ケース1 8
元のページ ../index.html#28