友和は、明るく気働きのする小百合に一目ぼれで、小百合も後輩にも優しい友和に最初から好意を抱いていた。どちらかというと優柔不断な友和と面倒見がよく姉御肌的な小百合は、サークル内では女房関白と揶揄されていた。友和は、卒業後、地元の信用金庫に就職した。小百合は、両親から地元への就職を強く求められたが、悩んだ末、親元へは帰らず、大学近郊の自動車販売店に就職した。二人の結婚までの道のりは平坦ではなかったが、大学を卒業してから三年目、めでたく結婚、友和の実家のあるA市内のアパートを借りて新生活をスタートした。友和には姉が二人おり、長姉は同じ市内に世帯を構えていて、実家にも頻繁に出入りしていた。また、他県へ嫁いでいる次姉も年に四~五回は子どもを連れて帰省していた。小百合は、共稼ぎではあったが、長男の嫁としての責任を果たそうと努力し、できるだけ友和の実家に顔を出していた。なかなか子どもに恵まれず、不妊治療を始めようか迷っているころ、小百合は妊娠した。そして、仕事と家庭の両立が難しいと感じ始めていたこともあり、思い切って会社を退職し、専業主婦となった。ちょうど同じころ、友和の実家を建て替えることになり、同居の話が進められた。小百合は、結婚するに当たり友和の両親との同居だけはできないと友和に伝えていたこともあり、話を白紙に戻すよう再三友和に訴え、友和もあまりに急で一方的な話だと異議を唱えたが、聞き入れられることはなかった。間取りはおろか、内装一つ自分たちの希望を取り入れてもらえず、当初は家の引渡し直後に同居するよう求められていたが、小百合の両親の協力も得て、入居時期だけは悠人の百日祝いが終わってからということになった。それからの小百合は、苦労の連続であった。ただでさえ初めての子育てで不安や戸惑いが多い中、長男の嫁として家事全般はもちろん、小姑との付き合いまでこなし、佐藤家の家風、なによりも仙一のワンマンになじむことが最難関であった。13 3 家庭裁判所係属までの事情
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