12_実調面(右開き)
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と軽い安定剤と睡眠薬を投与した。一か月半ほどの通院、服薬で少し心身が楽になると、悠人のことが気になって仕方なくなった。家を出る日、悠人にはおじいちゃんの具合が悪いので、看病するためにおじいちゃんの家に行くこと、そのためしばらく幼稚園はお休みすると説明してあった。小百合がいなくなったことをどのように説明してくれているのかは分からない。家を出された直後に何度かメールを送ったが、友和からは何の連絡もない。きっといくら待っても友和から連絡してくることはないだろう。直接声を聞く勇気までは出ない小百合は、悠人の様子を尋ね、電話で悠人と話をして安心させたい旨のメールを送った。しかし、二日も経って返ってきたのは、もう連絡をしてこないでほしい旨の業務連絡の様な返信だった。小百合は、再び落ち込みそうになる自分を感じたが、入学を控えた悠人のことを考え、やるべきことを整理した。まずは悠人の状況を確認すること。一番親しい幼稚園のママ友にメールで連絡をとってみた。ママ友からは、何の連絡もなかったことを軽く責めながら、そんなに父親の状態が悪いのかと尋ねる返信があった。悠人は、少し元気がないように見えるが、毎日登園しているとのこと、ただ、幼稚園バスではなく、舅仙一の運転で姑が送迎しているとのことだった。幼稚園には実家の看病で帰省していると説明しているらしいことには安心したが、悠人を連れ去られることを恐れて送迎しているのだと分かった。今は態勢を整えるのが大切だと考え、ママ友にすべてを打ち明けて相談したい誘惑を抑えた。次は、どうしたら入学前に悠人との生活を再開できるかを考えなければならない。あの家に帰るのは絶対に無理。悠人と暮らすには、親子三人で家を出なければならないが、それができないのでこんな事態に陥ってしまった。では実家で悠人を引き取れるのか。あの仙一がみすみす跡取りを手放すはずがないと思うと、途方に暮れる思いであった。17  3 家庭裁判所係属までの事情    

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