⑵ 調停期日前の調停委員同士の打合せ午前九時三〇分、滝山調停委員が書記官室に記録を受け取りに行くと、すでに相調停委員の藤田が記録を借り出した後であった。しばらく待っても調停委員控室に藤田が現れないので、滝山は、調停室に向かった。滝山は、調停委員としてのキャリアは長く、一〇年以上になる。女性相談所で相談員をつとめていたが、体調と家庭の事情で退職し、その後、周囲の勧めもあって家事調停委員になった。当事者の話を常に共感的に傾聴する姿勢は、調停委員の間でも信頼を得ていて、調停協会の研修委員長を務めている。藤田は、長年勤めた金融機関を定年退職し、職場の先輩の勧めもあって志願して昨年調停委員に任命された。社交的で懇親会の幹事などは巧みにこなすが、現役時代は仕事一筋であったこともあり、こまごまとした家庭内のもめ事には苦手意識を持っている。新任当海南家庭裁判所では、紛争の実情把握はもちろん子どもの意思把握の一次的主体も調停委員会であること、調査官には効果的で効率的な関与が求められることから、調査官の初回期日立会いは限定的にしています。本件でもまずは調停委員会による調停を先行し、調査官関与の必要性が生じた時点で当番調査官による調整的関与を検討するのが相当との意見となっています。なお、同様のケースで調査官が初回期日から立ち会う裁判所もあります。 用語解説【調停委員】 調停委員会は,1人の裁判官及び2人以上の家事調停委員で構成されています(家事法248条1項,21条1項・2項)。家事調停委員は,最高裁判所によって非常勤の公務員として任命されます(民事調停委員及び家事調停委員規則1条)。【当番調査官】 調停当番として待機している当番調査官は,調停委員会から調査官関与についての相談を受け,調停進行について助言をしたり,調停立会いなどをして,調停進行をサポートしています。第2章 調停委員会による調整事例╱ケース1 28
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