小百合「あの、悠人の幸せを一番に考えていただけるということでとても安心したのですが、悠人の気持ち友和「私もそれが気になっていました。大人ですら緊張するような調停に悠人を連れてこなくてはならないのでしょうか」滝山「なるほど、お二人とも悠人さんのことを大切にされているのですね。滝山委員は、藤田委員のヘルプの視線に「お二人とも悠人さんのことを大切にしているのですね」と応えました。当事者双方が発した不安、疑問に対し、その発言の背景に共通して存在しているはずのポジティブな感情を言葉にして投げかけたのです。少し否定的なニュアンスのある質問や発言を受けると、得てして、「しかし」や「そうではなくて」などと反論、説得をしがちになります。まずは、─友和が藤田委員が答えようとする機先を制するように言葉をはさんだ。─調停を始める前から子どもの意思をめぐる差し手争いが始まったようで、藤田委員は、相調停委員の滝山にヘルプの視線を送った。「なるほど」、「~ことなのですね」などと肯定したり、要約したりすることが円滑な進行には有効です。を尊重するとして、実際にはどうやって悠人の気持ちを確認するのでしょうか」さきほどご案内したお子さんのためのガイダンスのDVDにもありますが、ご両親の不仲や争いに巻き込まれたお子さんは、一般的に争いや不仲を自分の責任だと思い込んで自分を責めたり、一緒に暮らしている親御さんに気を遣ったりと様々ではあるけれど、一定の反応を示しやすいと言われているようです。また、発育や発達の状況も様々ですから、お子さんの言葉だけでお子さんの気持ちや状況を理解するのも難しいと言われています」 第2章 調停委員会による調整事例╱ケース1 40
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