3 居住用マンションのような区分所有建物において,区分所有者である居住者がマンションで禁じられている託児所を専有部分において開設した場合,共用部分であるバルコニーに撤去が容易ではない造作,例えばサンルームを増築した場合,又は区分所有者の義務である管理費や修繕積立金の支払を何年にもわたり怠った場合,管理組合は,どのような対応を執るべきでしょうか。 一棟の区分所有建物には複数の専有部分があり,複数人が各専有部分を区分所有することが前提となります。そのため,区分所有者や賃借人等の占有者が専有部分や共用部分を使用する場合,他の区分所有者や賃借人等の占有者の権利に対して配慮する必要があります。これは,区分所有権に内在する制約です。また,管理規約においても,専有部分を住宅のみの使用にするなど,使用方法に制限を設けている場合もあり,これは,区分所有権の外在的制約です。区分所有法6条1項は,これら制約が存することを前提に,「区分所有者は,建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」と定めています。 この「共同の利益に反する行為」(以下,本書においては「共同利益背反行為」といいます。)の該当性は,当該行為の必要性の程度,これによって他の区分所有者が被る不利益の態様,程度等の諸事情を比較考量して決すべきものであるとされています(東京高判昭和53年2月27日金法875号31頁)。そして,区分所有者又は占有者が共同利益背反行為を行った場合,区分所有法57条から同法60条は,違反者に対して厳しい措置を講ずることができる旨を定めています。 もっとも,どのような場合に区分所有者又は占有者の行為が共同利益背反行為に該当するかは,画一的に判断できるものではなく,上記基準に従い,それぞれの事例において個別的・具体的な検討を要します。第 1はじめに〜共同利益背反行為とは何か〜
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